柳井維新

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志士道は死狂ひ也

 

男児、志を立てて郷関を出づ

学もし成ること無くんば復た還らず

骨を埋むるは何ぞ墳墓の地を期せん

人間到る処、青山有り

 

慈烏反哺の清狂による詩吟

月性上人、小さな漁村の熱血漢

大きな刀と志を持って立つ

あなたの矍鑠とした銅像の前で

いつも大畠の海を見やると

太陽の光で水面がキラキラ輝く

僕はなぜか目頭が熱くなる

 

喘息で不登校になっていた頃

自転車で駅の向こうの磯まで

危険な魚釣りをしていた

あなたはそばで叱咤激励する

その痛みを覚えています

今僕はあなたが国を憂いて

期待された人間になれていますか

 

あなたの塾の上の琴石山に登り

わが柳井市を遥かに見渡す

すでに学問を修めて志を固め

僕が骨を埋めるところは

わが故郷しか考えられません

なにしろここには同志が眠るから

琴石の天女も我らを祝福する

 

勤皇僧 仏の道に 剣持ち 渦潮の村 狂夫を育つ

 

志士道は死狂ひ也

 

五烏社は厳島神の使令する五彩烏なり

神、五烏に駕して伊保庄に至る

これを安んずるに烏病みて死す

神、これを埋め、因りて社を建つ

霊異あり

 

周防の独眼竜による撰文

白井素行先生、我が村の権威

萩から来られた儒学者の子

短槍の名人、鉄砲の名手

あなたは狂より理の人

知勇兼備の参謀の矜持

あなたは派手ではない

目立たず我々に宝を届ける

 

僕は知らず知らずのうちに

あなたが歩んだ足跡を辿り

室積の岸辺でひとり佇む

秘密の場所から水平線を眺めて

ここで南奇兵隊を編成された

兵法家であり卓越した総督

あなたの智略と剛毅を偲んで

 

そののちあなたは官軍を

石城山の頂上で精鋭に練兵する

古の白村江の戦いの後で

神籠石式山城が築かれた聖域も

今はのどかなアスレチックス場

国防のために立つ防人たちと

南奇兵隊の喚声が聴こえる

僕は英霊たちの姿を垣間見て

森の中で清々しい霊気を浴びる

 

あなたの石碑のそばにある病院

風邪を拗らせ何度も入院したが

体の弱い僕を見守っておられた

小烏の境内に立つ二柱の注連石

それに刻まれたあなたの漢文

幼い僕は意味がわからなかった

けれども独学で渉猟した今では

あなたが伝説を正確に理解され

重んじておられたことがわかる

 

かつてあなたが学頭を務めた

阿月の克己堂跡に僕はいた

波止で悪友たちと釣りをして

冬の神明祭では燃え盛る柱を見た

150年前にあなたが見た炎を

時を超えて僕も見ている

各地にあなたの魂が留まる

 

銃弾で右眼を失ったあなたは

青木の家で看病を受けていた

この怪我がなければと惜しむ声

しかしそれもきっと神の思し召し

なぜならあなたは上人と違い

田布路木に飯山塾を開いた

七十七の年を数えて門徒を育て

ついには我が社の碑文まで残した

 

新政府の役職を辞退されて

やや峻厳な国家神道よりも

小烏の素朴な伝説を大事にした

あなたの功績はそこにある

隻眼となったのはその代償

あたかも鴉神オーディンのように

智慧と引き換えに片目を捧げた

あなたの涙は神が見ておられる

 

わが伊保庄島の守り手

義勇軍を我が藤兵衛が見送り

北陸から錦の御旗を掲げた

凛々しいあなたを褒め称えた

僕に宝物を残してくれた英雄

あなたも必ずや小烏の杜に佇んだ

我々は古の神を召喚する

 

独眼竜 軍師となりて 出陣す 凱旋するは 小烏の里

 

志士道は死狂ひ也

 

そして時代の寵児はこう言い残す

志士たちの中心、我が国の守護霊

上関から皇座山を望んだあと

望郷の念が漢詩として橋に残る

留魂録に阿月の同志を想い

我が神の御心と呼応するかのように

 

身はたとい 武蔵の野辺に 朽ちぬとも 留め置かまし 大和魂

 

志士道は死狂ひ也

 

志士道は死狂ひ也

 

志士道は死狂ひ也