南無小烏 南無小烏 南無小烏大明神
母さんへ
母さんはこれまでもこれからも俺の灯火
俺に尊い信仰心を教えてくれた
母さんが脳出血で倒れたとき
気遣ったのは自分じゃのうて目の前におる俺じゃった
「死んじゃいけん、生きてよ!」
普通ならはーえらい助けてってなるのに
いつも死にたいって言いよった俺に遺言のように
そこに母さんの仏性を見たよ
それから介護で大変じゃったけど
長年ひきこもりで世話してもろうた恩返しができたよ
これも全部神様の深い思し召しじゃったんよ
母さんのことは絶対に見捨てんけえね
安心しちょきー
南無小烏 南無小烏 南無小烏大明神
叔母ちゃんへ
叔母ちゃんはじいちゃんに似てやおい人じゃ
でもちいと弱いところがあったね
よく二階の叔母ちゃんの部屋に行って遊んだね
ZARDの負けないでを聴いたり
魔女の宅急便を一緒に観たり
グッピー見るのが楽しみじゃった
でも俺は叔母ちゃんにぶち苦しめられたよ
いくら病気でもやっちゃあいけんことがあるんよ
そのおかげで今は悟りに至ったけえまあええけどね
叔母ちゃんはかわいそうじゃけえ幸せになってほしいよ
そういやあ叔母ちゃんは坂井泉水に似ちょる
南無小烏 南無小烏 南無小烏大明神
父さんへ
俺は父さんが自慢じゃった
頭がよおて空手部で強かった
でも自慢にできんようになった
あなたは取り返しのつかないことをした
でも今の俺は神様の思し召しじゃったと許しちょるよ
今では俺もいろんな経験をして
父さんの屈折した気持ちがわかるようになったよ
何より子供の頃に一緒に遊んでくれたことは忘れちょらん
朝はよう起きてカブトムシ採りに行ったね
いつか父さんが親鸞の話をして
こんなわしでも救われたと言いよったね
その通りに神様もお赦しになるじゃろうて
南無小烏 南無小烏 南無小烏大明神
ばあちゃんへ
ばあちゃんは俺には弱いおばあちゃんを演じちょった
でも本当はお人好しのじいちゃんを支えた知恵者
いけんちやって口ぐせが懐かしいよ
ばあちゃんがおらんかったら高河は潰れちょったよ
氷川きよしと朝青龍が好きじゃったね
ばあちゃんが作るよもぎ餅はぶちうまかった
塩っ辛い梅干しとらっきょうがもう食えんのが寂しいよ
おまるで用を足しとるとこを見て
ばあちゃんくさいよーって言ってごめんよ
俺もいつかそうなるのにね
南無小烏 南無小烏 南無小烏大明神
じいちゃんへ
じいちゃんは正真正銘の仏様じゃ
馬鹿な俺はじいちゃんの偉大さが後になってわかったよ
俺がひきこもっちょったとき
夏の暑い日にぼっとん便所から糞尿を汲んで
肥たごを両肩に担いで畑に出ていく姿
はっきりと脳裏に焼きついて
今も俺の心にキラキラ輝いちょる
家族が失敗しても決して責めなかった人
俺がこまいころじいちゃんは
おおけな鯉のぼりを立てて祝ってくれた
じいちゃんには一番大事なものをもろうた
それは目には見えん心の宝もんじゃ
俺はじいちゃんを世界で一番尊敬しちょるよ
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武吉さんへ
武吉じいちゃんはやおい人じゃったって聞いちょるよ
ばあちゃんが武吉さーの優しさに救われたんじゃて
武吉さーはアメリカ帰りでお金もっちょった
ほいじゃけえ養子さんに選ばれたんじゃね
牛やら馬を使うの慣れるのに大変だったじゃろう
力道山が好きだったみたいじゃけど
俺もプロレスが好きじゃったよ
武吉さんは仏様みたいな顔しちょるね
うちかたは男はやおうて女が強い
それは武吉さんから流れちょるんじゃろう
南無小烏 南無小烏 南無小烏大明神
キクさんへ
キクばあちゃんはしっかり者じゃったって聞いちょるよ
武吉じいちゃんを尻にしいちょったんかな
ばあちゃんも嫁姑でせんなかったらしいよ
ばあちゃんにとってはキクさーはいたしい姑じゃったんかね
でもキクさんがおらんかったら高河は途絶えちょった
キクさんが河野の血をつないでくれたんよ
保ちゃんがのうなって悲しかったね
キクさんの若い頃の写真はべっぴんさんじゃのう
武家の女性らしい凛々しい姿に正直恋したよ
武吉さんが怒るかのう
南無小烏 南無小烏 南無小烏大明神
半四郎さんへ
不肖の子孫で申し訳ありません
あなたが必死の思いで家を存続させたにもかかわらず
わたしの代で我らが高河家は終焉を告げます
しかれどもこの滅びはただの悲劇ではありません
わたしは死に物狂いで一族の神を召喚しました
足掻くように戦うことで有終の美を飾れたでしょうか
最後に大輪の花を咲かせて華々しく散ります
神よ、我らの最後をご照覧あれ
南無小烏 南無小烏 南無小烏大明神
