シンドバッド

神話三部作、第二部オリエント編。半分エンタメです。

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かつて大洪水が人類を襲った

我らの文明のゆりかごの地

楔形文字あるいはヒエログリフに

世界最古の書物を残している

おそらく神の書き初めであろう

 

チグリス・ユーフラテスの氾濫原

ここには遥かなアヌンナキの神々

そのもとにはエンリルが起こした

大洪水を生き延びた子孫たち

ウルクの王ギルガメシュは暴君

神々は土で野人エンキドゥを作り

彼らは格闘の末、固い友となった

レバノン杉の森の巨人フンババ

太陽神シャマシュの風で打ち倒す

ギルガメシュは友の死と共に

自らの死の運命を嘆き恐れて

舟に乗り永生希求の旅に出る

そしてついに不死の薬草を得るが

うっかりして一匹の蛇に奪われる

こうして人類は死ぬ定めとなった

マルドゥク神の僕、ネブカドネザル王は

兵を屠った無敵のチャリオットを撃破する

かのハンムラビ法典で有名な

目には目を、歯には歯をというごとく

 

肥沃なるナイル川の揺籃地

ここには太古のヘリオポリスの神々

アメン・ラーは太陽の船に乗り

地上と冥界を交互に照らす

豊穣の神オシリスはセトに妬まれ

謀殺されて遺体を切り刻まれた

妻イシスは大いに嘆き悲しみ

肉片を拾い集めて夫を復活させた

その遺児、隼の神ホルスは

仇敵セトを打ち破り王位に就いた

猫の神バステトに表れるように

この民は動物たちを大切にした

巨大なピラミッドの最深部には

ミイラとなったファラオたちが眠る

黄金の仮面を被ったツタンカーメン

女王クレオパトラは自ら毒蛇を

彼らの魂は正義の神マアトの天秤にかけられ

傾きが大きければアメミットが喰らい尽くす

そのときのため死者の書を携えて

 

ヒマラヤ山脈から流れるインダス川

ここには三位一体のトリムールティ

ブラフマーが多くの顔で世界を創造し

ヴィシュヌがアヴァターラで維持し

シヴァが破壊の舞踏をするサイクル

ヴェーダの時代には雷神インドラが

ヴァジュラを投げて悪竜ヴリトラを倒す

ラーマがシーターを助けるべく

魔王を神弓サルンガで射抜く

親族との戦に戸惑うアルジュナに

笛吹くクリシュナがダルマを諭す

この灼熱の大地には求道者たち

すぐに天上天下唯我独尊と叫んだ

聡明なシッダルタという王子が

菩提樹の下で悟りを開き転輪聖王に

やや北方のペルシアではやがて

ザラスシュトラという寵児が革命を起こす

彼らの教えは全世界に痕跡を残す

サラスヴァティーが奏でる旋律に乗って

 

ダウ船が海を望む半島の小高い山

洞穴の中で、ある男が瞑想に耽る

突如、天使の「誦め」という声

男は狼狽して妻のもとへ走った

砂漠の空には三日月の残月が浮かぶ