鯉のぼり

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古い家に赤ちゃんが生まれた

何十年ぶりの男の子ということで

一家全員が両手をあげて喜んだ

その子の祖父は玄関先に

大きな鯉のぼりを立てて

孫の誕生を大げさに祝った

男の子は慧佑と名付けられた

智慧で人を助けるという意味で

 

そののち慧佑と両親は

父親の都合で京の都に引っ越す

両親の愛情に包まれ健やかに

わんぱく坊主に育った

彼はウルトラマンが好きだった

母親が怪獣に捕えられている夢

彼は助けてと絶叫して目覚めた

また近くのお寺によく行った

伽藍の奥の小道を進むと

鮮やかな紅葉が水面に映っていた

 

再び父親の都合で周防の国府へ

友達と一緒に仮面ライダーに夢中

補助輪をつけた自転車に乗って

父親が後ろのサドルを持って

何度も転げながらようやく

自分でバランスを取っていた

彼は誇らしげにガッツポーズした

 

そのうち家族は故郷に帰ってきた

慧佑のわんぱくぶりは収まらない

庭の池を泳ぐ鯉を捕まえようと

石の上をぴょんぴょん飛んだ

祖母が慌てて駆け寄ってきて

誤って池に落ちてしまった

しかし彼のわんぱくぶりは続く

 

慧佑はいつものように近くの川に

網を持って生き物を探していた

ごりんつーがおるんじゃ

その様子を見た近所のおじさん

家に飛んで行って慧佑の母親に

危ないから早く迎えに行け

この川じゃ人が死んじょるんじゃ

と遠慮もなく叱りつけた

彼はたくさんの人に守られていた

 

あるとき母親とお寺に行った帰り

母親は夫との関係に悩んで

息子の慧佑に弱音を吐いた

けいくん、母さんと一緒に死ぬ?

この川に落ちたら楽になるよ

彼はブスッとした顔をして答えた

嫌だよ母さん、僕は生きたいよ

母親はハッと我に返って反省した

この様子のすべてをある者が

そばの山からご覧になっていた