おお、わが黒磯よ
お前はわたしを救った
山にはかぐや姫の滝が落ちて
海には兜島を日の出が照らす
空には鶚が飛翔している
四十路で黒磯の王に即位
戴冠するは小さな渡り鳥
かつて助けたツバメの雛
四羽の兄弟たちは息絶えた
一羽だけをわたしが悼む
この瑠璃と翡翠は
このルビーとサファイアは
君が届けてくれたのか
望外の賜物に驚くばかり
なんという霊鳥だろう
見窄らしい幸福な王子
伏す身に大きな力が働き
ついに奇蹟が起こった
それに至るまで人々の
どれだけの涙が流されたか
想像さえも超えている
遊具ではしゃぐ子供たち
その笑顔は涙の上にある
黒磯に 憩いのテラス うちたつる 笑顔の基 涙なりけり
眼下に顕現した空中庭園
ツバメの巣から歩くと
ほんの少しで遊歩道に着く
もはや庭付きの別荘だ
銭湯は広々として清らか
枯山水のような庭がある
まるでヴェルサイユ宮殿か
アラブの王族にでもなったか
監獄が極楽に変わった
ジャハンナムからパラダイスへ
ディオゲネスからハンムラビ大王へ
小烏が大鴉へと進化した
あなたの御力に叶わぬものなし
特大級の思し召し
神通力の方程式の解
神よ、なぜここまで
思し召しにしては破格で
ツバメよ、君なのか
恩返しにしては大きすぎる
わたしの断悪と積善
それに見合った祝福か
小烏のもとにおらずとも
恵みによってそこが小烏に
ただここにいてもいいよ
そう言ってくれる場所
故人のいう憩いの場は
心の目で探せば見つかる
たとえ神仏の御前になくとも
天地に満ちておられるから
癒やさるる かぐやの滝の 調べにて 芳しき森 小烏に似む
空中庭園と同じくして
とある傾国との契り
主よ、なぜここまで
かくのごとき恵みを賜るのか
永劫の責苦を解かれたのか
蜘蛛の糸を上り切り
わたしはそれを引き継ぐ
箱庭で蚕が繭を作り
糸を紡いで絹ができる
そのように我が心も
八重垣に繭を包み込もう
モイラの三女神が紡ぐ糸
その行く末は誰も知らない
わたしは死ねば神のもとへ還る
なぜなら、我らは皆そこから生まれたからだ
たとえば、ツバメの雛たちが我が国で
心優しき人に見守られながら生まれ育ち
巣立ちして南国で冬を越して
春にはまた日本へ帰ってきて
同じ人がいる場所に巣を作り
今度は自分の雛を育てるという
永遠の命に与る願いを叶えるように
そのように、我々も神の守護のうちに生まれ
死ねば再び神のもとへ還るのだ
つまり、わたしは帰巣し、また成就する
ただ祈る、跪いて
今度は心の叫びではなく
喜びが響き渡ることを
いつの日かゆく浄土に
あなたがいてくださることを
優婆塞が 行ふ道を しるべにて 来む世も深き 契りたがふな
