武士道と言ふは 死ぬ事と見付けたり
失われし伝家の弓 長く恐れさえも抱かせる
黒漆が塗られた 敵を射抜く歴戦の重藤弓
愚か者の狂気によりて 無惨にも打ち捨てられた
安徳天皇と共に壇ノ浦に沈んだ かの草薙剣のごとく
必死で守ろうとして すでに地上にはなし
源平で元寇で 勇ましく武功を立てし偉大な祖先
日ノ本を守りし 我が河野の弓が今はなし
扇立つ 小舟の上に 武者狙う 祈りと勇気 それを射抜けり
わたしは決意した 御家再興せんと
葉隠に鼓舞されて 死に物狂いで戦うと
意気高揚して家に帰った 正々堂々と戦う
視界に入る荒れ果てた土地 俺が何とかしてやる
しかし帰ってみると 家宝がすべてもぬけのから
家の誇りと魂が 知らぬ間に失われていた
計り知れない喪失に わたしは絶句し地に倒れ伏した
怒りと悲しみを通り越し 体もまともに動かない
「我が魂は中有に留まり、命根長養の守護神となるべし」
あくる日に 小烏の秋祭りがあった
わたしは呻きながら 何とか智慧を出そうとしていた
このままでは死んでしまう 家も滅んでしまう
そしてついに閃いた 喪失ではなく獲得したことにしようと
河野の弓は 千年もの間、家を支えてきた
これからはお前が それに代わるものを自力で獲得しろと
そう弓を引く祖先が わたしに告げていた
「この朽木をもって我が姿を刻み、安置し登礼すべし」
今後一千余年 子孫を支えるものは弓箭にあらず
勇気を与えてきた重藤弓 それに匹敵するものを残さなければならぬ
後の世において 自分たちと同じように苦難に見舞われる子孫のために
現代の武器は 何の誇りにもならない紛い物
河野の弓は 実際に血みどろの戦で使われた本物だ
祖先が命をかけて この日ノ本と我ら子孫を守ったのだ
のうまく さんまんだ ばあさらだあせんだん まあかろしゃだや そわたやうんたらたあ かんまん
そしてわたしは思い起こした 小烏の伝説を
五烏大明神が 我が像を刻めと神勅されている
仏像ならば 老若男女問わずよりどころになる
いつの日か 自分のような心くじかれる者のために
わたしは仏師ではない ただ死狂ひの気概で神像を残す
いにしえの祖先の勇気を 慈悲の姿に変えて
かの那須与一のごとく 俺はお前に祈りの矢を放つ
天上には河野の弓が復活する それゆえ嘆くべからず
がんばれ 負けるな 仁智勇を磨け 我は汝と共にあり
梓弓 射手はここに その宝 浄土にありて 不滅とぞ知れ
