恋人よ、あなたは美しい
あなたの瞳は瑠璃のよう
葡萄酒にもまして
あなたの愛は快く
高価な香油、流れるように
あなたの名は芳しい
わたしは高洲の桜、野の薔薇
丈夫の中にいるわたしの恋人は
茨の中に咲きいでた百合の花
わたしの愛しい人は
森の中に立つ林檎の木
わたしはその木陰を慕って座り
甘い果実を口に含みました
葡萄のお菓子でわたしを養い
黄金の林檎で力づけてください
わたしは恋に病んでいますから
愛しいあの人はわたしのもの
わたしもまたあの人のもの
躑躅の中で蜜蜂を集めている人のもの
わたしがひとりなのは
あなたがわたしを独り占めしたいから
わたしもあなたを独り占めにします
わたしは籠の中の金糸雀
あなたは口笛を吹く乙女
夕べの風が騒ぎ
影が闇に紛れる前に
愛しい人よ、野の牝狐のように
深い山へ帰ってきてください
夜ごと臥所に恋い慕う人を
求めても見つかりません
起き出して街を巡り
通りや広場を巡って
恋い慕う人を求めよう
あの人は見つかりません
どうかあの方が、その口をもって
わたしにくちづけしてくださるように
恋人よ、あなたは美しい
あなたの瞳は瑠璃のよう
ベールの奥にひそんでいる
髪は烏の濡れ羽色
目は水のほとりの翡翠
身を洗い淑やかに佇む
鼻は大星山の塔
伊保庄を見はるかす
頬は香り草の花床
静かに座っている
唇は紅の苺
ミルラの雫を滴らせる
恋人よ、あなたは美しい
あなたの瞳は瑠璃のよう
笄の陰のこめかみは柘榴の花
首は見事に積み上げられた灯籠
手は白銀、女王の珠玉を嵌めて
サンダルを履いた足は美しい
ふっくらとした腿は
匠の手に磨かれた彫り物
腹は梅に囲まれた茶臼山
乳房は二匹の子鹿
光の中で草を喰む双子の鴨鹿
恋人よ、あなたは美しい
あなたの瞳は瑠璃のよう
夕べの風が騒ぎ
影が闇に紛れる前に
小烏の山に登ろう
白檀の丘にわたしは登ろう
恋人よ、あなたは何もかも美しく
傷も穢れもひとつもない
あなたの吐息と抱擁は美酒
八朔のように甘酸っぱい
その甘美な味に酔いしれる
愛しいあの人はわたしのもの
わたしもまたあの人のもの
杉の中で梟を啼かせている人のもの
あなただけを見ています
聖なる言霊はその僥倖
あなたの可憐な声が届き
他には何も聴こえません
わたしの言葉だけを聴いてください
あなたの心に注連縄として
あなたの胸に注連石として
わたしを刻みつけてください
姫百合の乙女の誇りとして
わたしの愛しい人よ
急いでください、燕や隼のように
五色の風が吹く木瓜の山へ
どうかあなたが、その口をもって
わたしにくちづけしてくださるように
恋人よ、あなたは美しい
あなたの瞳は瑠璃のよう
