指輪の思い出

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MP3 オーディオファイル 8.8 MB

一つの指輪は、すべてを統べ

一つの指輪は、すべてを見つけ

一つの指輪は、すべてを捕えて

くらやみのなかにつなぎとめる

影横たわるモルドールの国に

 

じゅげむでビデオを借りた

二本組の大作みたいだ

いったいどんな映画なんだろう

うわ、すげー映像が綺麗

ちっこい小人たちがかわいいぞ

主人公のフロドはぼんぼんやな

魔法使いのガンダルフは賢者

俺もこんな田園で暮らしたいな

 

モリアの洞窟でガンダルフは

魔王バルログと対峙する

旅の仲間を守るために

「ゆけ!馬鹿者!」

彼が闇の底に落ちたあと

一行が洞窟を出た風景

空と山のなんと美しいこと

あの澄み渡った空を俺は

引きこもっていた暗い部屋で見た

はっきり脳裏に焼きついている

フロドの涙と共に

 

そのあとロスロリアンの森へ

ガラドリエルの奥方の心眼に

ボロミアはやましさを覚える

エルフたちから宝物をもらい

小舟で大河を下っていく

丘の上でオークどもの奇襲

魔が刺したボロミアは

フロドから指輪を奪おうとするが

すぐに我に返り過ちを嘆く

逃げたフロドにアラゴルンが

指輪を彼の手に握らせる

オークの軍勢に聖剣アンドゥリルを手に

たった一人で立ち向かっていく

彼の父祖の名を叫んで

「エレンディル!エレンディル!」

 

ホビットたちが襲われているところに

改心したボロミアは飛び込んでいき

オークの魔の手から危機一髪で助ける

一人で何人もなぎ倒すが

首領のオークに弓で射抜かれる

弁慶のように仁王立ちして

勇敢で悲壮な最期を遂げる

アラゴルンに詫びて王都を託し

「我が主、我が王、万歳」

と言い残して息を引き取る

王は彼の額にキスをして

頬に一筋の涙がつたう

俺はこの光景も忘れられない

 

誇り高きセオデン王

俺は彼が大好きだ

蛇の舌とサルマンに惑わされて

正気を失っていたが旅の仲間に救われた

目覚めた後は老体に鞭打って

獅子奮迅の働きをした

ゴンドールとの義理を守り

アラゴルンと共に出陣する

「進め!エオルの子よ!」

オークどもが包囲する王城に

ローハン軍が陥落間近で到着する

セオデンは自らの騎馬軍団を鼓舞する

ただ「死だ!」と吠える

騎士たちは士気がうなぎのぼり

角笛が吹き鳴らされ突撃して

オークどもを木っ端微塵に蹴散らす

だがアングマールの魔王が舞い降り

ナズグルに乗って彼に喰らいつく

絶体絶命の王に姪のエオウィンが

女の身でありながら武装して

王を庇い魔王の前に立ちはだかる

「王には指一本も触れさせぬ」

魔王は人間の男には殺せぬ者

女であるエオウィンの剣に倒れる

セオデンは姪に言い残す

「今なら誇り高き祖先のもとへ行ける」

彼らの高潔な姿に俺は涙が止まらない

 

黒門の前でオークの大軍勢を前に

新王アラゴルンは自軍に号令をかける

「この世が滅びるときが来るかもしれない。しかしそれは今ではない。戦うときだ!」

男なら誰もが打ち震える

最後はサムとゴクリだ

彼らは対照的な存在

モルドールの滅びの山で

息も絶え絶えなフロドに

「僕はあなたの重荷を背負うことはできません。でもあなたを背負うことはできます!」

と叫んで主人を抱えて登っていく

断崖でフロドは己に負ける

ゴクリが指輪を奪い取り

その身ごと溶岩に落ちていく

おそらくは彼も神の配剤

イルーヴァタールの思し召し

フロドが最後にサムを見たときの

何とも言えない表情が忘れられない

本当の関係には言葉はいらない

 

中学で見た映画が今も記憶に残り

俺の行動原理となっている

果たして自分は英雄たちのように

立派な人間になれているか

実際はゴクリではないか

自らを顧みて問いかける

俺は聖人君子じゃないことはわかってる

せめて一度堕ちても甦った

セオデンやボロミアのようになりたい

最後まで死に物狂いで戦う

 

一つの指輪は、すべてを守り

一つの指輪は、すべてを赦し

一つの指輪は、すべてを救って

あかるみのなかにいこわせる

光輝くヴァリノールの国に